「そうか。
、、、君は、ヤヨイのために死ねるのかい?」
「、、、。
あいつが笑って生きられるようになるまで死ぬつもりはありません。そして、自意識過剰かもしれないけど、あいつが笑える世界には俺が必要だと思っています。」
「なぜそこまでヤヨイに肩入れできるんだい?出会って3ヶ月やそこらの他人じゃないか。」
「それは、俺も不思議です。あいつはすごい力もっているような気がする。でも今のあいつは全てを諦めているような、そんな感じがしていて、俺は、そんなあいつを守らなきゃって。他人のはずなのに、そんな気にはなれなくて、だからあいつのことをもっと知りたいし、この世界について、そして昨日シエルさんが言っていたゲートという人のことについても知りたいんです」
「そうか。君にはどこか、ゲートに似たようなものを感じるよ。何もかもが違うはずだけどね。少しだけ、ゲートについて教えよう。ゲートは、ヤヨイの付き人でね。」
「付き人?」
「そう。下庭と戦うための戦士とは別に、ヤヨイを守ることを目的とし、常に行動をするものを付き人という。そして、ゲートは半分ヤヨイの育ての親のような側面もあってね。母上が亡くなった時から、ヤヨイを僕達で育てたわけだが、当時から母上の指名でゲートがヤヨイの付き人になってね。勉学から戦闘まで、ほとんどゲートの下でヤヨイは育ったんだ。」
「そうだったんですね。そのゲートという人は今どこにいるんですか?」
「、、、死んだ。そう思われていたよ。」
「え?」
「3ヶ月前、事件があってね。下庭のものが本来上がってこれないはずの上庭に大量に現れ、戦争が起きたんだ。その時、下庭の者達の狙いはヤヨイだった。戦争中、ゲートはヤヨイをかばって戦い、やがて致命傷を負った。死の間際、自らがおとりとなって、ヤヨイを中庭に逃したんだ。それでヤヨイは、中庭で君の前に現れた。しかし、ヤヨイが中庭に落ちた後、戦争が終わり、戦後の処理を行ったが、ゲートの死体はどこにもなかった。上庭の者は誰も、ゲートが死んだ瞬間を見ていない。考えられるのは、下庭の者になんらかの目的で死体を回収されたか、人知れず中庭に落ちているか、それとも、、、まだどこかで、生きているかもしれない。だがヤヨイは、あの事件があったことで精神が不安定な状態になっている。今ゲートのことについて話をしても、混乱するだけだろう。上庭の世界にもう一度慣れてヤヨイも落ち着いたころに、戦士と共にゲートの調査を行おうと思っている。
話が長くなっちゃったね。ざっとこんな感じだよ。君の知りたいことは知れたかい?」
「、、はい。ゲートはヤヨイにとって、どんな存在なんですか?」
「難しい質問をするね。ただの付き人、そのはずなんだけどね。僕から見たら、ヤヨイはゲートに特別な感情を抱いていた気がするよ。僕もあの2人の関係性はよく分からないんだ。でも、ただの普通の関係では、あんな不安定な状態にはならないだろうね。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「話を戻そう。君はじゃあ、戦士になりたいという意で捉えていいのかい?」
「はい。」
「分かったよ。では明日から、修行を始めていくよ。他の戦士にも会うし、稽古は兄さんがしてくれるよ。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
「うん。じゃあ今日はゆっくり休んで。そして今日のゲートの話は、誰にも口外しないようにね。」
「はい、分かりました。ではまた明日。シエルさんもゆっくり休んでください。」
「ありがとう、おやすみ」
そう言ってシエルとカイは別れた。
「さて、、、どうなるかな。」